人の最期に寄り添う「看取りケア」は、看護・介護に携わる人にとって最も尊い瞬間です。
しかし現場では、突然の別れや判断の迷いなど、誰もが戸惑いを感じるもの。
この記事では、現役看護師監修の『看取りケア完全マニュアル』の内容をもとに、
現場で実践できる看取りケアの基本・声かけ・心の準備をわかりやすく解説します。
人の命に寄り添うあなたに、そっと寄り添う1本の道しるべとなるように──。
看取りケアとは?(ターミナルケア)

看取りケアとは、「人生の最終段階における身体的・精神的な支援」です。
医療の延命ではなく、「その人らしく最期まで生きること」を支えるケアを意味します。
看取りケアの目的
- 苦痛を和らげ、穏やかな時間を提供する
- 家族が心の準備をできるように支援する
- 本人・家族・スタッフの信頼関係を守る
看護師や介護士は、命を救う仕事から“見送る支援者”へと心の切り替えが必要になります。
「もう何もできない」ではなく、「まだできることがある」。
それが、看取りケアにおける最も大切な考え方です。
身体的ケア(痛みの緩和・清拭・体位変換)と、精神的ケア(声かけ・触れる・沈黙を共有する)の両輪で進めていくことで、患者本人と家族の両方に「安心の時間」を提供することができます。
現場での流れとポイント

看取りケアの現場では、最期まで“生活”を支える姿勢が大切です。
ここでは実際の流れと注意点を紹介します。
① 状態の変化に気づく
呼吸・顔色・意識レベルなど、微細な変化を観察します。
家族にも「今の状態」をわかりやすく説明し、焦りを軽減させます。
② 苦痛を最小限に
口腔ケア・体位変換・保湿など、“穏やかな表情”を守る工夫を。
最期の瞬間を迎えるまで、**「触れるケア」**を大切にします。
③ 家族とのコミュニケーション
「がんばりましたね」「ずっとそばにいますね」など、短い言葉が心を支えます。
沈黙もまたケアの一部。焦らず、共に時間を過ごしましょう。
④ 亡くなられた後のケア(エンゼルケア)
身体を清め、整えることで、ご家族が安心してお別れできる空間を作ります。
このときの表情が“記憶”になります。
よくある迷いや不安とその対応

看取りケアには、経験を重ねても「迷い」はつきものです。
以下は多くのスタッフが直面する悩みと対処法です。
よくある不安 | 対応のヒント |
---|---|
最期の瞬間に立ち会えないかもしれない | 「一緒に過ごした時間がケア」だと捉える |
家族にどんな言葉をかければいいかわからない | 「そのままで大丈夫ですよ」「ゆっくり呼吸しましょう」など短く優しく |
涙が出てしまう | 感情を抑えず“人としての共感”として受け止めてよい |
苦痛を減らせなかった | 完璧よりも“寄り添う姿勢”が何より大切 |
こうした不安は、正しい知識と心の整理によって軽くなります。
だからこそ、実践に即したマニュアルや研修教材が現場で役立ちます。
心に寄り添うための心構え

「看取りケア」は、技術だけでなく人間としての在り方を問われるケアです。
看護師・介護士自身が心のバランスを保つことが、良い看取りケアにつながります。
心構えのポイント
- 「助ける」から「支える」へ意識を切り替える
- 自分を責めず、「今できる最善」を尽くす
- チームで共有し、孤独に抱えない
- 終わりを恐れず、「つながり」を感じて寄り添う
亡くなることは“喪失”ではなく、“命のリレー”の一部。
あなたの手が、次の希望につながる瞬間が、必ずあります。
まとめ
看取りケアは、命の最期を見届けるだけでなく、生きることを支えるケアです。
患者さんの尊厳を守り、家族の心を支えるその行為には、看護師・介護士の深い想いが込められています。
コメント